2011年版 掲載写真の解説

原版はすべて6×7(約55o×70oのフィルム)で撮影したものを、コダックのラボでデジタル化しています。
今回思い切ってオフセット印刷にしてみたのですが、 担当者がCMYKでの画像処理に慣れていないこと、最終入稿までの時間がなく色校正も出来なかったこと、 があって原版のよさを生かすことが出来ませんでした。 今後の課題として取り組むと共に、次年度以降もこの企画が継続できますよう皆さまのご支援・ご協力をお願い申し上げます。 ありていに申しますと買って下さい。
2011年版の表紙はEF5861による浪漫さよなら運転@上越線です。

【上越線を下る浪漫さよなら列車】

 2011年版の表紙はEF5861牽引の浪漫さよなら列車です。ずいぶん懐かしい写真になりますね。
 上越線の下りは基本逆光で悩ましいのですが、いい具合に陰ってくれました。 電気ガマ(電気機関車)の写真はパンタグラフが架線柱と重ならないように撮るべし、というお作法があるのですが、 なんとか柱本体はクリアしていました(このお作法を破った写真のことを業界用語で「パン串」といいます)。 なにしろ、6×7版ではモードラじゃらじゃらで数打って当てるわけにいきません。
 旧型電機はやはり美しいですね。実は私、私鉄派・電車派なものでゴハチロクイチはこれが初ショット。 この日の折り返しが今生のお別れでした。もっと撮っておけばよかったと悔やまれます。
 ところで、この写真についてはその後若干議論がありました。ご存知の通り、ゴハチロクイチはお召し指定機です。 そんなものを無批判に掲載するのは天皇制を批判する労働組合としてどうなのか、という訳です。 私自身、「偉い人」が動かす今の社会は限界だし、労働者が権力を取って社会を作り直す以外この世界の未来はないと思っています。 そのとき旧時代の秩序の象徴であった天皇制をどうするかは重要な問題です。 そういう問題提起としてゴハチロクイチは重要だと思うのですが、何しろほとんど相談なしで勝手に載せてますので…。 お詫びして自己批判します。
2011年版1-2月は大糸線のキハ52始発列車です。

【キハ52156の大糸線始発列車】

 2011年版1-2月は雪を蹴って走る大糸線の始発列車です。タラコ色のキハ52156がやってきました。雪に映えるいい色ですね。
 大糸線のキハ52がいよいよ危ないという話が出た2010年の撮影になります。 この日は前日の夜半からにわかに雪が積もり出したので、もっとも雪の吹きだまっていそうな中土−北小谷で始発を待ちました。 待っている間レンズに向かって雪が降ってくるは、道路の除雪車に三脚の立ち退きを強要されるはで、なかなか苦労させられました。 撮影時の印象では完全にピントを外したと思ったのですが、現像上がりを見るとピントは完璧。いや分からないものですね。
 原版ではカレンダーの写真より2/3段分くらい明るく写っています。 コダックでデジタル化した時点で既に暗かったのですが、暗い方が始発っぽくていいかと思って放置したら印刷では思いのほか暗くなってしまいました。 次回の教訓にしたいと思います。
2011年版3-4月は福知山線脱線事故現場付近を通過する特急「北近畿」(国鉄色)です。

【福知山線脱線事故現場付近の「北近畿」】

 2011年版3-4月は福知山線脱線事故現場の急カーブを通過する特急「北近畿」(国鉄色)になります。 こんな企画でもなければまず選ばない画題ですね。
 よく誤解されますが、例のマンションはこの写真には写っていません。 障害物がなければ画面の右外にある筈ですが、手前の家と桜の木に隠れて撮影ポイントからは見えません。 カレンダーの構成上どうしても4月の桜が欲しいので、この構図になりました。 この桜の木は国鉄解雇者も結集する福知山線脱線事故弾劾集会のデモ解散地の公園にあります。 ご興味のある方はぜひ集会に参加してみて下さい。今年は4月23日13時よりJR尼崎駅北口駅前広場にて開催されます。 若干時期遅れの感もありますが、本品(団結カレンダー)の即売も行われます。
 さて、話を写真に戻しますと、撮影することに意義があるみたいな感じで鉄道写真的にはかなり苦しい構図です。 終日逆光のうえ、柵あり、電柱あり、通行車両・駐車車両あり、の三重苦・四重苦状態。 桜を大きく入れて花ピントならまあいいか、と考えて出来たのがこの絵です。
 原版をデジタル化したときにちょっとマゼンタが強いな、と思ったのですが、桜だからいっか と放置したら印刷で濃度が上がって空までピンクになってしまいました。 これも次回の教訓ですね。
2011年版5-6月は久留里線のキハ30三重連です。

【久留里線のキハ30】

 2011年版5-6月は久留里線のキハ30です。 国鉄時代の色に戻したキハ30は普段へんな色の気動車を併結して運用されるため、このような運用はたいへん貴重です。 この日はたまたまのイベントで天候にも恵まれました。
 撮影ポイントは偶然に発見した田んぼです。 写真というものはたいていそうなのですが、鉄道写真は特に素材がすべてだと思います。 他のジャンルの写真のようにポーズとかライティングとか晴れ待ち・雲待ちとか撮影者が自由にコントロールするわけにいきません。 その意味でこの写真はたいへん素材に恵まれて、撮影者としては @3両収めてA水鏡の頭を切らないようにしてB電柱とか高圧鉄塔とか余計なものをなるべく入れない、 という点に注意を払ったくらいなものです。 いつもこんな具合にいけばいいのですが。
2011年版7-8月は広島電鉄被爆電車650形651と原爆ドームです。

【広島電鉄の被爆電車650形651と原爆ドーム】

 2011年版7-8月は広島電鉄の650形651です。 被爆電車と言った方がとおりがいいかもしれません。 この形式の652が原爆投下の翌日にはもう市内を走り回り、その姿が広島市民に力を与えたといいます。 この月だけ国鉄の車両でないのですが、特別な月ということでご容赦ください。
 実は2011年版に先んじて制作した試作版でほとんど同じ構図の写真を使っています。 路面電車を撮影される方ならお分かり頂けると思うのですが、 このような構図では車が電車を隠してまともな写真にならないことが多く、なかなか満足のいく絵が撮れません。 試作版では手前の車の欠片が画面に入っていたり、肝心の電車が回送表示だったりで納得できなかったので再挑戦です。 今回は回送表示でもなく車の欠片も入っていないのですが、後打ち(後ろ側)でパン串です。 完璧なものはなかなか撮らせてもらえません。
 ちなみにこの場所、光線がいいのは朝方ですがビルの谷間になるため、 いい具合に電車に日が当たるのは8月でせいぜい1時間程度です。 しかも撮影ポイントはバス停が間近で朝ラッシュのバスが数珠つなぎで完璧に前をブロックしてくれます。 この写真を撮る前に651、652とも前向きに走ってきたのですが、揃いも揃ってバスにブロックされました(涙)。 次年度はさすがに別の絵にします。
2011年版9-10月は木次線のキハ28・58(木次線90周年号)です。

【木次線のキハ28・58(木次線90周年号)】

 2011年版9-10月はこれまた昔の木次線90周年号です。 山陰の国鉄型急行気動車もついに消えてしまいましたが、国鉄解雇撤回闘争は終わりません。
 HP上ではお分かり頂けないと思いますが、カレンダーの写真では急行「ちどり」号を模したヘッドマークの「 木次線90周年 記念号」の文字、 渡り板の裏面に書かれた「キハ58 596」の文字まではっきり読み取れます。 最近のデジタルではどうか分かりませんが、35ミリフィルムではこうした細部の描写は覚束ない点があって 大きくて重い6×7判を持ち歩く事になってしまいました。 こうしてきっちり解像されていると報われた気がします。
 今年は気動車の無くなりものがキハ52・山陰キハ28・58と続いたため気動車成分過多の内容になってしまいました。 来年はもう少し機関車を入れたいですね。
2011年版11-12月は雪晴れのSL北びわこ号(C56160+12系客車)です。

【雪晴れのSL北びわこ号(C56160+12系客車)】

 2011年版11-12月は唯一のSLです。河毛〜高月の高時川橋梁にかかる築堤で撮影しています。
 6×7で45ミリとかなり広角レンズを使用しているため、周辺光量落ちが目立つかもしれません。 空を広く入れたのに高く上がらない煙が少し残念でもあります。
 気が付けば青い12系客車もずいぶん貴重になってしまいました。 JRも私鉄各社も新自由主義全開の昨今では産業史的に価値がある旧型車両を惜しげなく潰します。 唯一の例外がSLということで、この12系が残っているのも間違いなく北びわこ号のおかげでしょう。 変な塗り替えをしないで、末長く国鉄時代の原型を保ってほしいものです。 国鉄型主体でまとめるこのカレンダーも近々SLまみれになりそうですね。
解説文ひととおり付けました。よろしくお願いします。

メインページに戻る
inserted by FC2 system